神戸立ち呑み巡礼

復刻改訂版について

神戸に、立ち飲みに行こう。元祖ハイカラな街には、立ち飲みと、それを愛する男たちが、良く似合う!
~コラム 立ち飲みの街、神戸 より~
 

酒屋の立ち呑み(角打ち)は文化であるという主張を理解をしていただき、兵庫県芸術文化活動支援事業の助成を受けて「神戸立ち呑み巡礼」の初版を発行したのが二〇〇六年三月のこと、すでに十余年が過ぎ去りました。(神戸新聞の書評は→こちら

類書がないこともあって、立ち呑み愛好家から喝采されて迎えられ、今はなき海文堂書店の協力もあって初版はすぐに売り切れ追加を印刷したことが昨日のように思い出されます。

神戸市立中央図書館が発行する「KOBEの本棚」第53号(→こちら)の新しく入った本の項で写真付きで紹介されたこともありました。非常に光栄なことで、後に出版社からの企画本として「神戸立ち呑み八十八カ所巡礼」を出版することに繋がりました。

しかしながら、本にまとめて記録として残したいという当初の目的は達成できたものの、予想できたことですが高齢化や後継ぎが確保できない等の理由で酒屋の立ち呑みの減少が加速度的に増してきたことが挙げられます。このために「神戸立ち呑み八十八カ所巡礼」に掲載した店の中からも廃業する店が続出し、改訂版の企画を何度も出すものの売れ残るような本は出せないという出版社の事情や出版不況に諦めていました。

二〇一八年に入り十年ぶりに広辞苑第七版が出版されました。北九州角打ち文化研究会の地道な活動が実って待望の広辞苑への「角打ち」掲載が実現しました。一方、「神戸立ち呑み巡礼」に掲載した二十店のうち半数以上が廃業してしまいましたが今も営業している店を復刻版で紹介できないものかと思案をしておりました著者にはいい機会の到来です。

初版のときは印刷所で印刷をしてもらいました。執筆・編集・印刷・製本を著者一人で行うこと、流通はリツルプレスに理解のある古書店などを通じて行うことで復刻版が出せるのではないかと考え、その見通しもつきました。

そこで復刻版では初版掲載の二〇店から廃業した店などを除いて七店とコラム「立ち飲みの街、神戸」を残し、新たに十四店を追加し合計二十一店を紹介することにしました。追加した店の中の数店は私の著書で初めての掲載となります。

初版出版時と比べて現在はネットでの情報収集が普通になりました。逆にネットに載っていない店を捜す方が難しくなっている状況があります。本が売れない最大の理由にネットの存在が挙げられています。本当にそうなのでしょうか。WEBではできないことがまだ活字の紙媒体にある気がしますし、紙で残し伝えていくことが大切であると思います。

この復刻版が特にまだ酒屋の立ち呑み(角打ち)を体験していないような方に“立ち飲みの街、神戸”を楽しんで頂ける一助になればと願っています。

 二〇一八年六月 著者